3ヶ月の間、再開発によって変わりゆく桜丘町の地域にてフィールドワークを繰り返し、再開発による変化を惜しむ声、渋谷にも世代交代の時が来たと語る老舗の店舗、再開発に反発する者など、多くの人にインタビューを実施。それだけ多くの声が集まる桜丘町なので「閉店」の日はいつも以上の客が集まり(マスメディアに取り上げられる老舗百貨店の「閉店」のように)大層な儀式があるのだろうと予想していました。しかし、実際の閉店は、いつも通りのあっけなさに満ちていました。シャッターが定刻におりたり、朝まで地元の人で賑わっていたり、閉店翌日も常連向けに営業したり。勝手にドラマチックな「閉店」のイメージを描いてしまっていた私たちはそのギャップに拍子抜けしつつも、普段、私たちがいかに見たいコト・モノ(理想)に影響され、それをもとに行動をしているかに気付かされます。つまり、理想も一つの現実になりえるのです。本文庫本シリーズでは、読者が閉店の日のフィクションを読んでいるのか、ノンフィクションを読んでいるのかをあえて隠すことで、理想と現実のあわいを味わい、閉店の日のフィールドワークを追体験できる設計となっています。